ハゼの持ち帰り         2017年10月18日



「釣ったら兎にも角にもクーラーに入れましょう」
以上が結論です。


以下は、徒然なるままに書いただけですので気が向けば斜め読みでもしてください。

江戸川放水路の桟橋でハゼ釣りをしていると、家族やカップル、友達同士で和気藹々と楽しんで
おられる一方で、夏の炎天下、バケツの中のハゼは酸欠で既に死んでいるのに放ったらかし、
というような状況に頻繁に遭遇します。後述しますが、新鮮な状態で持ち帰るにはこれは最悪
です。

高校で生物を選択した方であればアデノシン三リン酸を御記憶だとおもいます。私は当時の共通
一次試験用に生物を選択したので憶えていますが、この物質(以下、ATP)が魚の鮮度に重要な
作用を起こします。

以下、ものすごく簡単に書いてしまいますが・・・・^_^;

@ とても乱暴な解釈ですが、食事で得たカロリーがATPに変換されて筋肉収縮や発熱への
  エネルギー源になります。ATPは筋肉収縮において筋肉を緩める方の作用をします。
  一方、筋肉を縮める作用をするのがカルシウムイオンです。
A魚が死ぬと細胞は体内に残された栄養分を消化し出します。肝臓などに貯蔵されたグリコーゲン
  の分解がそれです。グリコーゲンは分解されてリン酸となり、リン酸は体内に残ったATPによる
  作用で乳酸になります。
B死ぬと新たなATPの補給はなく、体内に残存したものが消費されるのでATPは減少する一方、
  筋肉の収縮を促すカルシウムイオンは増えていきます。やがて筋肉は収縮を続けて硬く
  なって行きます。これが「死後硬直」です。
C 死後硬直が進むにつれて細胞内の酵素が働いてイノシン酸というアミノ酸が増えてきます。
  イノシン酸は旨み成分であり、ATPが無くなった時にイノシン酸は最大値となり、一番の旨味を
  持ちます。この期間を「熟成」と言い、魚は暫く寝かせてから食べた方が美味いというのは
  これが理由なのでしょう。
Dやがて、硬直が徐々に解けて軟化するに伴い、体内特に内臓に宿る細菌の活動が盛んになり、
  「 腐敗 」 へと進んでゆきます。(牛肉などは腐る直前が一番美味いなどと言いますが・・・(@_@;))

釣ったハゼの鮮度維持のためには、ベストは生かして持ち帰ることですが、近所に住んでいるので
あればともかく、車や電車釣行の場合、クーラーで冷やして持ち帰るのが現実的な選択でしょう。
でも何故冷やすのか? 腐らせないため? 
いえ、冷やして筋肉の活動を抑えることにより、ATPの消費を抑え、それによって死後硬直までの
時間を稼ぐ為、という理由なのです。前述の如く、腐るのは更に先の段階です。

資料によると魚の死後硬直は早いもので10分、遅くとも5時間後には始まるとのことですが、個人的
感覚としてはハゼは死後硬直するまでの時間、および硬直が解けて腐敗に進む時間、両方とも非常
に早い部類に属すると思います。ですから、釣ったら生きているうちにとっととクーラーに入れましょう。
・バケツの水の中で死んだハゼは死ぬ直前までずっと運動しているので、ATPの消費が進んでおり、
 死後あっという間に硬直が始まります。
・炎天下バケツの中で白くなっているハゼを見ます。既に死後硬直しているのです。ハゼは死後硬直
 により身が白くなります。これでは家に着いた頃には腐敗が始まっている可能性も有るので注意です。
・魚にやさしいと思ってビクを使った場合、あんがいビクの中のハゼの状態がわからないものです。
 納竿時まで絶対死なないとの自信がない個体はビクには入れずクーラーに入れましょう。
・確実に死ぬ個体も即クーラーへ入れましょう。鈎を飲んだ個体は内臓或いは鰓に傷が付き、暫くは
 元気に泳いでいる様子でも程なく死にます。確実に死にます。
・死ぬ可能性のある個体も即クーラーへ入れましょう。鈎外しに手間取ってしまった個体などはショック、
 或いは手の体温による火傷、鈎外しでハゼを持つ手に力が入ってしまうことによる圧迫などで死ぬ
 可能性が高いです。

ぐだぐだと書いてきましたが、要は釣ったらクーラーに入れるということなのです。ハゼの身が氷焼け
しないように、袋に入れるなどして、直接触れさせないようにした方が良いです。
もし釣り場での時間に余裕があれば、釣ったハゼを釣り場で鰓と内臓を処理してしまい、塩水で軽く
洗い、ペーパータオルに包んでクーラー保存すれば鮮度は保たれ、帰宅後の作業も節約できるので
とても良いと思います(頭が不要なら頭も落とします)。


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