鯊の産卵                       2016年1月4日   

マハゼの生態と言うのは本当に不思議で、釣りをしながらそれを推測するのも
釣り人の特権だと思うのです。
例えば、マハゼの産卵ですが、比較的浅い場所でも問題なく産卵していると思い
ます。凡そ図鑑などの類には、マハゼは水深10m前後の砂泥底にU字状のトンネル
を掘り、産卵室を設け、その天井部分に産卵する、などと書いて あります。
どうもこの10m前後というのがこの手の資料の相場(?)のようですが、東京都
島しょ農林水産総合センターの内湾調査平成20年2月「湾奥におけるハゼ科魚類の
出現」という報告には「マハゼは、東京湾奥では水深4m から8m程の砂泥域に
トンネル状の巣穴を掘って産卵し・・」とあります。 同センターの内湾調査平成
26年6月「河川下流に上ってきたマハゼ」と言う報告でもやはり「江戸前のハゼと、
親しみ深く呼ばれているマハゼAcanthogobius flavimanusは、冬春期に成熟し
湾奥の砂泥底に産卵用の穴を掘って、その 産卵孔の上部壁面に卵を産み付けます。
東京都内湾では水深4m付近から10m ほどの深さでマハゼの産卵が確認できて
います・・」と記載されています。 同センターの前身は東京都水産試験場です。
同試験場は1983年にマハゼの 巣穴の標本採取に成功した東京湾奥のマハゼの
研究では権威ある機関が4m付近から と言っているのです。他にも、神戸にある
神港魚類という、マルハニチロの関連会社のHPにも「水深5m前後かそれよりも
浅い砂泥で」と記載されていました。国交省太田川河川事務所のHPでは「水深2〜
7 mの泥底または砂泥底」と書かれていますし、宮城県漁連のHPに到っては
「宮城県では気仙沼湾、万石浦などの浅い内湾に生息しています。転石の下面や
貝殻の内面、さらにはジュースの空缶内などに産卵し、雄が孵化まで保護しています」
と記載 されており、ここでは砂泥底や巣穴のことすら触れられていない上に、
「浅い」と いう表現が使われています。万石浦はハゼ釣りでとても有名な内海ですが、
環境省のHPによると湾内の最大水深は3.9mしかありません。
要は、自然の営みを10m前後との固定観念で括ってしまっては事実を見誤ると言う
ことです。
面白いのが「転石の下面や貝殻の内面、さらにはジュースの空缶内などに産卵」 と
いう部分です、これは「天井」となる部分に産卵すると言う習性に見事に合致します。
厳寒期にテトラポッド帯で見事なハゼを釣っている方が居ます。わざわざ巣穴を掘ら
なくても、このような障害物は卵を産み付ける天井を形成してくれているという事
なのだと思います。

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