東京湾のハゼは水深4〜8m程度の粘土質の海底に穴をほり、産卵、子育てをすると言います。
場所は江戸川、隅田川、多摩川の河口とその沖合いが主らしく、最盛期には東京湾には大量の
マハゼがいて、釣っても釣ってもハゼは繁殖し、ハゼが”湧く”と表現されたようです。
今も我々は「今年のハゼの湧きは良い」などと、 ”湧き”という表現を使うものの、”湧き”
の程度は昔とは比べ物にならないほど違うのでしょう。
東京都島しょ農林水産総合センターのホームページで「東京湾のマハゼの生息状況について」という、
調査報告が掲載されていましたが、とても興味深い内容でした。
ハゼ釣りは夏(7〜8月)の「デキ(出来)ハゼ」に始まり、秋(9月)の「彼岸ハゼ」、産卵期を
迎えて深場へ移動する晩秋の「落ちハゼ」、さらにケタ網漁の水深までに深く落ちた「ケタ(桁)
ハゼ」と呼ぶ真冬の釣り、この頃、婚姻色が出た個体を「お歯黒ハゼ」とも呼ぶようです。 初期の
出来ハゼから彼岸ハゼの頃は老若男女を問わず、初心者でも容易に釣ることが出来て、夏から秋の
ハゼ釣りシーズンには東京湾のあちこちの河口で、にわか釣り師も含めて大賑わいとなり、これは
現代でも江戸前の夏から秋の風物詩となっていると言えましょう。この時期は「ひと潮(約15日)
3分(約1cm)」と言われるように、著しく成長し、その為に積極的に餌を追うので、にわか釣師や
子供でも十分楽しめる所以です。江戸時代、彼岸の中日にハゼ食べれば中気にならぬなどと言われた
のは有名ですが、それほどにこの時期のハゼが美味しいということなのでしょう。
ところが、秋も深まって、朝晩めっきり涼しくなり、時に肌寒く感じたりするような季節になると、
ハゼの急成長はひと段落し捕食行動は徐々に地味になり、釣り方も難しくなって来ますが、むしろ
地味な行動に因る微妙なアタリがマニアを喜ばせる事になるのです。さすがにこの季節になると、
にわか釣師では苦戦する一方で、この頃になって漸くハゼ釣りを始める人も居ます。この時期は、
釣味と食味両方が楽しめる、ハゼ釣りシーズンのピークとも言えましょう。ハゼは晩冬から初春に
産卵し命を終えるが、2年活きる個体も居り、ヒネハゼと呼びます。即ち「陳ね(古)ハゼ」
ですね。高級そうめんの「ひねもの(古物)」と同じ、「ひね」です。 東京湾に負けず劣らず
ハゼ釣りが盛んな土地は宮城県の松島地方ですが、こちらは水温が低い影響で1年魚の成長が遅く、
2年魚になってから産卵すると言います。このため初秋から大型のヒネハゼがたくさん釣れ、一部は
東京の築地市場に活けで出荷されていますが、キロ1万円以上?という超高級魚のようです。
年越しで松島湾の養殖海苔を鱈腹食べて育ったハゼは昔の江戸前ハゼの味がするということでしょうか。
それにしても、焼き干しにした後でも優に20cmを超えていると言いますから、こんなハゼを釣って
みたいものです。
最後に、私が試してみた料理をば。:

@かき揚げ
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・腹を裂いてワタを出す
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・青ネギ(或いはアサツキ)を細かく切る
 ・天ぷら粉+卵黄+水(薄めに作り、ハゼとネギを入れて混ぜる)
 ・天ぷら油の準備(綿実油+ごま油。ブレンド比は自由。
  普通の天ぷら油でも良いが、ごま油は入れた方が風味が全然違う。)
 ・おたまで適当量を掬い、160〜180度の油で揚げる(天ぷら粉は
  あまり沢山絡ませない方が良い)

A空揚げ
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・頭を落とし、ワタを取る
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・ハゼに片栗粉を薄くまぶす
 ・天ぷら油で揚げる
 ・ポン酢で頂く
 ※唐揚げは充字。本当は空揚げ。
  いわゆる唐揚げ粉やカレー粉をブレンドしても美味

A串カツ
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・腹を裂いてワタを出す
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・ハゼに竹串を刺す
 ・水でといた薄力粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけて、180〜190℃の油で揚げる。
 ・串カツソースの準備(ウスターソース+どろソース+微量の醤油、ブレンド比自由)
 ・ソースに浸けて食べる

B大蒜とオイスターソース炒め
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・腹を裂いてワタを取る
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・ハゼに片栗粉を薄くまぶす
 ・フライパンに薄く油を敷いてハゼを炒める。
 ・暫くしてから大蒜スライスを入れて炒める
 ・大蒜の色が変わって来た頃、オイスターソースを適量入れて
  ハゼに絡め、暫く煮て出来上がり。
  ※非常に美味

C南蛮漬け
・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・頭を落とし、ワタを取る
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・ハゼに片栗粉を薄くまぶす
 ・天ぷら油で揚げる(低温でじっくり)
 ・南蛮酢の準備
  酒:醤油:酢=1:1:1 これにスライスした玉ねぎを
  加えて、軽く煮る(一煮立ちさせるだけ。ピーマンなどを
  入れると彩良し)
 ・南蛮酢に揚げたハゼを浸す
  ※熱々が美味、冷蔵庫で一日寝かせると更に美味 

D天ぷら
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・頭を落し、ワタを取る
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・ハゼを背開きにする(中骨取るか取らないかは自由)
 ・天つゆを作る。
  (市販の天つゆに、落した頭を入れて煮たものを濾す)
 ・天ぷら粉+卵黄+水(薄めに作る)
 ・天ぷら油の準備(綿実油+ごま油。ブレンド比は自由)
  普通の天ぷら油でも良いが、ごま油は入れた方が風味が全然違う。)
 ・160〜180度の油で揚げる(天ぷら粉は少量絡ませる)
 ※背開きにせず揚げるのが江戸前の天ぷら。

E田楽
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・頭を落し、ワタを取る
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
 ・ハゼを背開きにする
  (小さなハゼならワタを取るだけで良し)
 ・焼き魚同様にオーブンで焼く
 ・焼き上がり直前でオーブンから一旦取り出し、
  田楽味噌を塗って再度オーブンへ(味噌が暖まる程度で
  良い)。焼け具合は好みで。
  ※田楽味噌の作り方  
   味噌・・・100g 砂糖・・・・80g
   酒・・・3/4カップ みりん・・・大さじ1
   これをかき混ぜながら弱火で煮る。とろっとしたら出来上がり
  (普通の味噌で良いが、八丁味噌は美味)

F甘露煮
 ・ハゼを塩揉みしてヌメリを取る
 ・水で良く洗う(水を使うのはここまで)
 ・腹を裂いてワタを出す
 ・ワタの残りをふき取る(キッチンペーパーが便利)
  (頭を落すかどうかは好みで)
 ・ハゼを軽く焼いて、日陰で1時間程度干す
  (干す時間無ければ軽く焼くだけでも良い)
 ・煮汁の準備
  酒5、醤油1、砂糖適量、みりん適量
  (鍋に入れたハゼがひたひたになる程度の量)
 ・煮汁が煮えてきたらハゼを入れる。
 ・落し蓋をして、とろ火で煮続ける(頭が取れ身が崩れるので
  あまり触らない)
 ・煮汁が半分程度になれば、その後時々煮汁の味見をして醤油の
  濃さ・砂糖の甘さを調整する。
 ・煮汁が煮詰まったら完成
  ※煮汁は最初は薄めにしないと仕上がりが辛くなる。淡→濃は
  可能だが、濃→淡の調整は不可能ゆえ気をつける。
  
一番シンプルなのは、頭とワタを取り、素焼にして醤油垂らすだけ。美味です。


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ハゼ、徒然

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